睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群って何?


睡眠中に10秒以上呼吸が止まったり、呼吸が弱くなったりする回数が1時間に5回以上ある場合を睡眠時無呼吸症候群と言います。呼吸が止まると体の中の酸素が少なくなり、酸素が足りなくなってくると息を吹き返すということを繰り返します。 

その間体が緊張するため眠りがとても浅くなります。夜中の眠りが浅くなるとその反動が日中に来て、ちょっとしたことですぐに眠ってしまいます。


どんな症状があるの?


①いびきをかく

睡眠時無呼吸症候群の方が仰向けに寝ると舌の根元が気道を塞ぐようになります。 気道が狭くなると空気が通るときにいびきがでます。 

いびきをかいている状態は低呼吸と呼ばれる状態です。 

低呼吸は無呼吸ではなく、空気の通りが減っている状態です。


いびきをかいている本人は寝ていて感じないかもしれませんが、家族にとっては大きな問題となることがあります。 

治療をして一番喜ばれるのは奥様ということがしばしばあります。


②家族から息が止まっていると指摘される

これは症状ではないのですが、睡眠時無呼吸症候群の方の9割以上は家族からの無呼吸の指摘があります。

大きないびきをかいていたのに急に音がしなくなるのでどうしたのかと見てみると息が止まっているのです。


いびきを常にはかかないタイプの中枢型睡眠時無呼吸症候群(呼吸をコントロールする脳がやられる睡眠時無呼吸症候群)の方ではこの家族からの指摘はあまりないです。

 

③日中の眠気

これは感じる方と感じない方がいます。 ただし、客観的に見てより眠気が強い状態であると認められるにもかかわらず、自覚的には眠気が実際より少なく感じている人が結構います。


患者さんが運転するお仕事の場合は交通安全においても日中の眠気は大きな問題となります。運転中に寝てしまったら事故が起こって危険ですね。


眠気を感じる場合はCPAP(機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り、気道を広げて無呼吸を防止する機械)で治療をすると眠気がなくなることが多いので非常に喜ばれます。

 

④夜間体動 夜間頻尿

息が止まってその後息を吹き返します。喘ぐような大きな呼吸になったり、いびきをかきはじめたりします。そのときに大きく体も動いたり、寝汗をかいたりします。寝相が悪いので隣で寝ている方は困りますね。

また、トイレに何回も起きることもあります。 

 

⑤熟睡感の欠如 倦怠感

呼吸が止まったりして体には緊張が続くので、しっかり眠った!という感覚が少なくなります。また、なんとなくだるいと感じることがあります。

 

⑥朝の頭痛

無呼吸になり、酸素が足りないだけでなく二酸化炭素が体の中に増えることによって頭痛が起きると考えられています。全体の35%ほどの方が自覚します。 

 

⑦呼吸困難感

睡眠時無呼吸症候群の方のうち38%の患者さんは目が覚めたときに息が苦しかったと感じます。

直前まで息こらえをしていたのですから当然といえば当然です。1回当たり1分以上呼吸停止している方もしばしばみられます。


どんな検査でわかるの?

当院では簡易モニターを使っています。指先に付けたモニターで、血流量と血中の酸素濃度を測り夜間の睡眠中の無呼吸の指数(AHI)を調べます。 また胸につけるモニターでからだの向きを測定し仰向けになっているか横向けになっているかを見分けます。

 

1)簡易モニターでAHI(無呼吸の指数)が5未満の場合

正常なので治療不要です。

 

2)5以上20未満の場合

マウスピースによる治療になります。

 

3)20以上40未満の場合

入院をしてもっと精密な検査をして治療方針を決定しないといけません。簡易モニターは寝ているところを全て監視することができず、さらに患者さん自身で機械を装着するため正確な値が出にくいからです。 

 

4)40以上の場合 

非常に重症な睡眠時無呼吸症候群が疑われます。CPAP(機械で圧力をかけた空気を鼻から気道に送り、気道を広げて無呼吸を防止する機械)による治療となります。

     

どんな治療をするの?

①軽症の場合

マウスピースで治療します。仰向けに寝ているときに下の顎が下がっていくと気道を狭くしてしまいます。 下顎をマウスピースで引き上げることによって気道が塞がるのを防ぎます。ですから、横向けになっているときにも呼吸が止まっている人にはこの治療は向いていません


②AHI(無呼吸指数)が20以上の場合 

CPAP(シーパップ)という機械で治療します。鼻にCPAPを装着して鼻から空気を送り圧力を気道にかけ続けることによって舌が咽頭に落ちないようにします。当院で使っているCPAPの機械はこちらです。この装置をつけることによってAHI(無呼吸指数)はほぼ0〜2くらい(正常値)になります。もとのAHIが60くらいの超重症な場合でも正常値まで下がります。そのくらいCPAPという治療は有効です。

 

では、CPAPはずっと続けなければならないのでしょうか?いいえ、体重を減らすことでCPAP治療が不要になることがあります。CPAPをなんとかやめたいと思われるのなら、頑張ってダイエットするしかありません。ただし、すでに痩せている場合や顎が小さい場合、中枢性睡眠時無呼吸症候群が合併している場合はCPAPをやめることは難しいです。

 

費用はどのくらいかかるの?

3割負担の場合で話をしていきます。

 

①簡易モニター

初診料を含めると窓口負担金は3560円になります。(2019年4月時点)

 

②簡易モニターでAHI(無呼吸指数)が20以上40未満の場合

入院をして精密検査をすることになります。個室などになるとまた別途料金がかかり病院によって費用が異なりますが、大部屋で1泊なら大体3万円前後です。

 

検査の結果、軽症か重症かで費用が異なります。

 

①軽症の場合 

マウスピースで治療になると歯科に紹介することになります。詳しくは歯科で相談していただきたいのですが、保険適応のマウスピースで1万円くらいからです。しかし、保険の効かないものでは15万円くらいするものもあります。最初に費用を聞いてから受診した方がいいでしょう。一旦作ればしばらく費用はかかりませんが、使用するのは口の中なので力がかかって数年すると壊れることがあります。

  

②重症の場合

CPAP治療になります。これは毎月費用が発生します。再診で通院する場合月々4270円(2019年4月時点)かかります。そして毎月受診が必要です。高いと思われるかもしれませんが、睡眠が十分に取れるのでほとんどの患者さんは続けています。


なぜ放っておくといけないの?

睡眠時無呼吸症候群であるにもかかわらず、治療をしないで放置しておくとどうなるかという有名な研究があります。

その研究では、中等度以上(1時間当たりの無呼吸回数(AI)>20)の睡眠時無呼吸症候群で無治療の人とCPAPで治療した人たちの生存率を比較しました。

その結果を表したものが下記のグラフです。


下記のCPAPとあるグラフが示すようにCPAPを使用していた人は5年間で誰も死亡していません

しかし、controlとあるグラフが示しているように何も治療しなかった人たちは8年後に63%しか生き残れませんでした。


つまり、睡眠時無呼吸症候群は中等度以上では生存率が低いけれどCPAPを使うと生存率は非常に高くなるのです。

1988年に発表された非常に衝撃的な研究でした。(HeJ,et al : Chest, 94, 9-14, 1988)


                                  HeJ,et al : Chest, 94, 9-14, 1988
HeJ,et al : Chest, 94, 9-14, 1988

 

別の研究では重症の睡眠時無呼吸症候群なのに無治療でいると死亡率は5.2倍まで上昇するとわかっています。(心臓疾患関連死) (Wisonsin Sleep Cohort Studyより)

 

また、睡眠時無呼吸症候群の高血圧合併率は50%で、高血圧患者さんの30%に睡眠時無呼吸症候群が認められます。(Somer VK et al.Circulation 2008;118:1080-1111)

 

以下は各疾患の睡眠時無呼吸症候群の合併頻度です。

Kales et al:Lancet 1984,Logan et al.JHepertension2001,Oldenburg et al.Eur J HF2007,Gami et al.N Engl J Med2005,Schafer et al.Cardiology 1999,Yumino et al.AmJ Cardiol2007,Sampol et al.AmJ Respir Crit Care2003
Kales et al:Lancet 1984,Logan et al.JHepertension2001,Oldenburg et al.Eur J HF2007,Gami et al.N Engl J Med2005,Schafer et al.Cardiology 1999,Yumino et al.AmJ Cardiol2007,Sampol et al.AmJ Respir Crit Care2003

このように睡眠時無呼吸症候群は心臓の病気や高血圧などと合併する確率が高く、合併していると当然ながら死亡率が上がります。また、自分の体だけでなく、他人も巻き込んでしまう可能性があります。 日中眠ってしまうことにより、長い運転中に睡魔が襲ってきて運転しながらも寝てしまうことが頻繁に起こります。そして最悪の場合は交通事故を引き起こしてしまいます。

今では運転免許を更新するときにもチェックされる項目となっています。

 

自身の体のためにも交通事故を起こさないためにも、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は医療機関で検査をして必要であれば治療しましょう。