Fever outpatient発熱外来

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1㎝以上の粉瘤にご用心!~おできになる前の切開がオススメです~ 

皮膚科について

「背中にしこりがあるんだけど。どうしたらいいかな。」
背中を見てみると、直径3センチくらいのしこりがありました。
しこりには中央に黒い点があり小さな穴が開いていました。

1㎝以上の粉瘤にご用心!~おできになる前の切開がオススメです~

さて、これは何でしょうか。

答えは粉瘤(アテローム)といいます。
粉瘤は皮膚腫瘍の中でしばしば見られる良性腫瘍です。

そもそも粉瘤(アテローム)とは何でしょうか。

粉瘤(アテローム)って何?
皮膚から脱落していくはずの脂分や角質が毛穴を通って皮膚の下に袋を作ります。
その袋の中に脂分や角質がどんどん溜まってできる腫瘍が粉瘤(アテローム)です。
皮下腫瘍の上に黒い点がしばしばあるため、それが目印になって粉瘤と診断できます。
しかし、黒い点がない場合は他の皮下腫瘍と見分けにくくなります。

粉瘤の症状
炎症を起こさない限り何も症状はありません。
ただ邪魔になるとか見栄えが悪いのが気になる程度で他の多くの皮下腫瘍と同じです。
ところが炎症が始まると痛くなってきます。
激痛になることはあまりないのですが、破裂寸前の大きな粉瘤になるとかなりの痛みを伴います。
背中にあると眠れないこともあります。
痛みが強くなってきて初めて来院されるので、炎症が始まってから来院されるまでに10日前後かかることもザラです。

粉瘤を放置しておくとどうなるの?
内容物が炎症を起こして膿のようなドロドロの状態になり、おできになります。
細菌感染が原因なのか、何かにぶつけて炎症が始まるのかは今のところはっきりしていません。
とにかく内容物を全部外に排出してしまうか、抗生物質で炎症を収めるかどちらかの方法を行わないと治りません。
多くの場合は切開もしくは穴あけの太めの針やパンチを刺して内容物を搾り出します。
完全に絞り出して内容物がなくなった状態になるまで2、3日かかります。
その後、内容物が入っていた空間に下から肉が盛り上がってその空間を塞ぐのに大抵は1週間ほどかかりますが、大きなものの場合は数週間かかります。

炎症を起こす前の粉瘤の治療
①パンチで穴をあけてくり抜いて内部を搾り出す。
へそ抜き法と呼ばれています。
中心に黒い点がある場合でそこを中心に直径3〜5ミリくらいの穴を穴あけパンチで開けます。
内容物を絞り出した後、袋状の皮膜を取り出し、ガーゼなどで覆って傷口が自然に閉じるのを待ちます。
最終的にはニキビ程度の痕跡が残ります。
ただし、何度も炎症を起こして癒着している場合は袋状の皮膜が取り除きにくく若干痕跡が残ります。

②切開して腫瘍の塊を取り出す。
安定している時に切開するのはおススメです。
深さと大きさをエコーで確認して直線状に切開をします。
腫瘍を皮下組織から少しずつ剥がしていきすべて剥がしたら外に取り出します。
周囲の組織と強く接着しているとき(つまり癒着)はハサミでなかなか剥がせないので時間がかかります。
10分で終わるときもあれば30分以上かかるときもあります。
全部取り切れたら最後は皮膚を縫合して終わりです。
縫合した後、傷の具合を確認するために何度か通院しおよそ1週間後に抜糸します。

1㎝以上の粉瘤にご用心!~おできになる前の切開がオススメです~

取り出した粉瘤

おでき(炎症をおこしてしまった粉瘤)の治療
①飲み薬で治療する
小さくてちょっと赤いだけの場合が適応です。
抗生物質で効果がある場合は数日で改善しますが、外からの打撲などの力によって起きた炎症性粉瘤の場合は治らないこともあります。
抗生物質で治った場合、内部に脂の塊のような腫瘍は残ったままです。
具体的に言うと、ドロドロの液状になった状態です。中央部の黒い点からその液体が出てくることもあります。

②針を刺して搾り出す。
これも炎症性粉瘤が小さい場合です。
皮膚との距離が一番近くなっている部分に針を刺し、その穴から注射器で吸いだします。
吸い出し切れないものは周囲に圧迫をかけて絞り出します。
穴が小さいので傷跡はほとんど残りませんが、毎日のように絞っても全部絞り出せないのでどうしても治療期間は長引きます。
消毒に毎日来られない場合や顔周辺の粉瘤などは針で対処します。

③切開する。
膿でパンパンになっている粉瘤は強い痛みを伴います。
局所麻酔をかけて切開します。
直線状に切開するだけでは傷がすぐに塞がろうとして膿が出ずなかなか治りませんが、十文字に切開すると膿を絞り出した後、簡単には傷が塞がらないため膿が自然に外に出てきます。
大きく切開した方が治りが早いのは不思議なことですね。
特に炎症が激しい粉瘤の場合は大きく切開した方がいいです。
膿の量にもよりますが、2〜3週間ほどで下から組織が盛り上がってきて傷は塞がります。

まとめ
粉瘤は放置していても何も変わらないこともあるので、切開して取り出すか悩ましいところですが、おできになっていない時期に切開し摘出する方が完全に取り出しやすいし、傷は目立たずに済むと思います。
1センチ以上の大きさになったら粉瘤は摘出することをお勧めします。