Fever outpatient発熱外来

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繰り返す膀胱炎にはこれ!〜意外な予防方法〜 

内科の症状

<膀胱炎とは>

排尿時に違和感があったり痛みがある場合があります。
同時に残尿感や排尿回数が増えると膀胱炎かもしれません。



外来でこのような症状を訴える方の大半が女性です。
昨年度当院にて膀胱炎と診断した患者さんの数は80人でしたが、その中で男性は2人だけで残りの78人は女性でした。

目次
1. 膀胱炎の症状
2. 膀胱炎は男性にはほとんどなくて女性に多い理由
3. 膀胱炎の原因の菌は大腸菌
4. 膀胱炎の治療はなんといっても抗生物質
5. 再発する膀胱炎の予防にクランベリーは効果がある?

<膀胱炎の症状>

膀胱炎の症状は排尿時終末期痛、頻尿、残尿感、尿の混濁です。
膀胱炎の四大症状というべきかもしれません。
当院では膀胱炎を疑った時には必ずお聞きする項目です。



● 排尿時痛:膀胱炎の場合は特に排尿の終わりごろに痛みが強くなる傾向があります。
膀胱に尿がなくなると膀胱が小さくなり粘膜同士が接触して痛みが出るためです。
最初から痛みが強い場合を初期排尿時痛と言います。
尿が炎症や傷のある場所を通過するときに痛みが生じます。
尿道炎、尿道結石などの場合に多い症状です。

● 頻尿と残尿感:膀胱に常に刺激が加わっているため、すぐにトイレに行きたくなったり、トイレに行ったのにまだ尿が残っている感じが続いていることです。
もちろん頻尿、残尿感を起こす疾患は他にもあるので総合的に診断する必要があります。



● 尿の混濁:尿の色が濁ってくることがあります。
上記症状に加えて混濁尿があれば膀胱炎の可能性が高くなります。
特に症状がないのに尿が混濁してきたら、①尿路結石が小さい粒となって出てきている場合 ②おりものが混じっている場合などが考えられます。

● 自己診断:「以前、膀胱炎になったときと同じ感じなのよ。」というお話をよく聞きます。
尿路感染症の再発との自己診断は84%~92%が膀胱炎であるというデータがあります。(New Eng J Med 2003 Jul 17)
自己判断は膀胱炎においてはとても有用です。

また膀胱炎は炎症という名がついているにもかかわらず、熱は出ません。
主に膀胱の中だけで体の他の部分には広がらないのが膀胱炎です。



ただし、腎盂腎炎に発展すると熱が出ます。
膀胱と腎臓は尿管という細い管でつながっていて、膀胱から細菌の含まれた尿が逆流すると腎臓に感染が広がり腎盂腎炎になるからです。
腎盂腎炎になると細菌が腎臓から血液にのり全身に広がるため膀胱炎よりも重篤な状態になります。

<膀胱炎は男性にはほとんどなくて女性に多い理由>

女性に膀胱炎が多い原因は膀胱から外に向かう尿道が3~4センチと短いからです。
男性の尿道の長さは約18センチです。圧倒的な差があります。
女性は大腸菌など細菌が多く存在している肛門と尿道との距離が男性に比べて接近しているのも女性に多い原因の一つです。
むしろ、男性の膀胱炎は他の疾患の可能性が高いので、膀胱炎を疑う症状が出た時は、最初から泌尿器科専門医に受診してきちんと調べてもらった方が良いと思います。

<膀胱炎の原因の菌はやはり大腸菌>



膀胱炎の原因は細菌感染です。
細菌の中でも一番多いのは大腸菌です。膀胱炎全体の70%がこの大腸菌が原因です。
大腸菌はその名の通り大腸に最も多く存在しています。
肛門周囲にも大腸菌はいるので距離が近い女性の尿道は大腸菌が侵入しやすくなります。

<膀胱炎の治療はなんといっても抗生物質>



大腸菌に効果のある抗生物質を使います。
ほとんどの場合は3日も飲めば膀胱炎は治癒しますが、抗生物質が効かない細菌の場合は3日たっても改善しないので薬を変更する必要があります。
最近では今まで使われてきた抗生物質に対する耐性菌も出現してきているのでより注意が必要です。



他にも膀胱炎に使用する薬剤には漢方薬があります。代表的な漢方薬に猪苓湯、五淋散などがあります。
抗生物質を使った後に膀胱刺激症状だけ残る場合は、しばらく漢方薬を使うと症状が改善してきます。
また、頻回に再発する場合にも猪苓湯の長期投与で再発しなかったという報告もあります。(西洋医学的治療に抵抗した慢性尿路感染症に対して猪苓湯が著効した一例〜藤田良介先生ら)
抗生物質でほとんどの場合、治癒するけれどもなかなか症状が改善しない時に漢方薬の出番があるのだと思います。

また、市販薬で「ボーコレン」という薬があります。
ボーコレンは漢方薬の五淋散を主成分としています。
錠剤なので粉薬が苦手な人にも良いかもしれません。



またナリジクス散(ウイントマイロン)という抗生物質が以前は市販されていましたが、耐性菌が非常に多くなり効果がなくなったという理由で2018年3月で発売中止されています。
現在市販されている飲み薬の抗生物質は残念ながらありません。(2020年11月時点)
世界的にも薬剤耐性が進んでいてあまり良くない状況ですので、今後市販される抗生物質は現れないかもしれません。

<再発する膀胱炎の予防にクランベリーが効果がある?>



膀胱炎の予防に対してクランベリー(ツツジ科の真っ赤なコケモモの実をつける低木)は効果があると考えられています。
「再発性尿路感染症患者に対するクランベリージュース(UR65)の予防効果を評価するためのランダム化臨床試験」高橋聡先生らの報告によると50歳以上の女性においてはクランベリージュースを飲んだら膀胱炎の再発が49%→29%に抑えられたという結果が出ています。
他にもクランベリーに関しては多くの論文が発表されています。

また、再発する膀胱炎を予防するために抗生物質を長期に渡って投与すると、もちろん効果がありますが、以下の理由からお勧めできません。
● 耐性菌を作ったり、カンジダ膣炎になってしまう副作用が出る
● 投与を中止するとまた元の状況に戻ってしまう



他には、水分を多く摂ると膀胱炎を予防できるという研究があります。
「再発性尿路感染症の閉経前女性における毎日の水分摂取量の増加の影響」Thomas M. Hooton先生らの報告によると水分を1.5リットル毎日飲んだ人(摂取群)と普通に水分を摂った人(対照群)を比べてみたところ、12カ月間の膀胱炎の再発回数は、平均値で摂取群が1.7回、対照群は3.2回でした。
水分を多く摂ると尿量が増えてトイレに行く回数が増え、細菌が尿道をさかのぼってきていても尿が押し流します。
膀胱炎になりやすいと思ったら水分を多く取るのは有効です。

<まとめ>

膀胱炎は女性に多い病気です。
膀胱炎かもしれないと思ったら膀胱炎である可能性は非常に高く、早期に抗生物質で治療すれば比較的治りやすい病気です。
症状が出たら早期に内科、泌尿器科の受診をおすすめします。
また膀胱炎を繰り返しやすい方は水分を毎日1.5リットル飲むか、クランベリージュースを毎日飲まれると良いかと思います。