Fever outpatient発熱外来

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妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~ 

気管支喘息について

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

ゼイゼイして苦しくて、夜に横になって眠れません。
横になると苦しくて座っていたり体を起こすと呼吸が楽になる症状を起座呼吸といいます。
これは、喘息発作の状態としては中等症(軽症と重症の間)です。
起座呼吸はあまり良い状態ではありません。
これが妊婦さんに起きると事態はもっと深刻です。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

喘息は症状がある人の割合が全体の9.4%、治療を受けている人の割合が全体の5.6%であり、一般的な病気です。
言いかえると、妊婦の10人に1人は喘息の症状があり、20人に1人は治療を受けています。
喘息は一般的な病気ですが、重症の喘息の発作が起きた場合には母体のみならず、胎児の生命の危機に瀕するので慎重に対応する必要があります。

妊娠中に喘息が起きると何がいけないの?
喘息が起きると気道が炎症を起こして狭くなり、呼吸が苦しくなります。
つまり、酸素が足りなくなります。

母体の酸素が足りないということは胎児への酸素も足りなくなります。
酸素が足りなくなると成長に支障が出るのはもちろんのこと、最悪の場合は流産、死産となります。

妊娠すると喘息は悪化するの?
妊婦の気管支喘息はおよそ三分の一は悪化し、三分の一は変化がなく、三分の一は改善するといわれています。
妊娠中に改善するのか悪化するのか最初の時点で予想するのは困難です。

この予測困難な状態に対応するために、呼吸器内科医と産科医の連携した治療が必要です。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

どうして呼吸器内科が必要なの?
胎児のために「母体のわずかな悪化を見逃さない」という慎重さが重要です。
妊娠初期に母体の肺の状態を確認しておくと、喘息が悪化した時にどの程度悪化したのかがわかるので細やかな対応ができます。

呼吸機能検査は妊娠初期ならばそれほど大変ではありません。
お腹が大きくなる前に基準となる状態を把握しておくことが重要であり、わずかな変化を見逃さないためにも呼吸器内科が必要なのです。

喘息の悪化を予防するには?
喘息の悪化要因から避難することが大事です。
避難可能な悪化要因は主に3つあります。

①気管支炎
気管支炎は喘息にとって最大の悪化要因です。
風邪をこじらせると気管支炎になります。
従って風邪をひいている人からは離れなければなりません。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

②アレルゲン
もともとアレルギーが強い妊婦さんの場合、自分が持っているとわかっているアレルギーの元からはなるべく遠ざからないといけません
例えば、花粉、ダニ、動物などです。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

③タバコ
タバコの煙の中に含まれる化学物質により喘息発作が誘発されます。
そして、タバコを吸っていると喘息を悪化させるばかりか胎児の成長にも悪影響を及ぼすので、禁煙は重要です。
赤ちゃんを無事に出産したいならば禁煙は絶対条件です。

ステロイドは使わないほうが良いの?
ステロイドと聞くと「絶対使いたくない」という方がいらっしゃいます。
しかし妊娠中の喘息治療においてそれは危険な考え方です。
ステロイドの副作用よりも喘息による酸素不足の方が胎児を危険な状態にさらすからです。

ステロイドを妊娠初期に使うとわずかに口蓋裂の可能性が高まるという報告もありますが、否定的な報告もあり、まだ結論は出ていません。
繰り返しますが、胎児が低酸素状態になると生命の危機です。

したがって吸入ステロイドだけで喘息を良い状態に維持することは母体と胎児にとって最も重要と言えます。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~

<気管支喘息のコントロールと発作時の治療>
ステロイドは吸入薬と経口薬と点滴薬に分けられ、それぞれ発作の程度に応じて使い分けられます。

①無症状〜軽症の発作
最初に使うのは吸入薬のステロイドです。
吸入薬のステロイドは経口薬のステロイドに比べると非常に少ない量で喘息のコントロールが出来ます。
発作が起きても横になれるほどのレベルの場合は、SABA(サバ)と呼ばれる気管支拡張薬を吸入します。

②中等度の発作
中等度以上の喘息発作(横になれないほど息が苦しい状態)が起きてしまった場合、まず最初はSABA(サバ)と呼ばれる気管支拡張薬を吸入します。
それでも喘息の状態が改善しない時はステロイドとテオフィリンの点滴を行います。
発作がある程度落ち着いたら、自宅で経口ステロイドを服用継続します。

③重症の発作
外来だけでなく入院が必要になります。
酸素吸入など行いながら婦人科もある病院へ救急搬送されることになります。

気管支拡張薬は使わないほうが良いの?
気管支拡張薬であるβ刺激薬は短時間作用型と長時間作用型があります。
長時間作用型はまだ評価が定まってはいませんが、短時間作用型の気管支拡張薬の服用は妊娠中であっても推奨されています。
胎児も脈が速くなりますが、それだけで奇形などの後遺症に関する報告は出ていません。

何度も繰り返しますが、母体の低酸素状態が続くほうがより悪影響を及ぼします。

ほかに使いやすい薬はあるの?
モンテルカストという薬は妊娠中でも妊娠中でなくても使いやすい薬です。
なぜなら副作用が非常に少ないからです。
ただし、効果がすぐに出る薬ではありません。

2週間ほどかけて効果が出てくる薬です。
発作時に使うというより発作を起こさないように前もって服用すると良いでしょう。

インフルエンザワクチンは打たないほうが良いの?
インフルエンザに罹患すると喘息が悪化します。
よって、妊婦さんは是非打ったほうが良いでしょう。

このように、喘息発作を起こさないためには妊婦さん自身ができることをなんでもやる必要があります。

まとめ
アメリカのFDA(アメリカの食品医薬品局:日本でいう厚生労働省のようなもの)にも、“Remember: It is better for mother and baby if the mother maintains asthma control (using any approved asthma drugs).“
という記述があります。
(どんな薬を使ったとしても喘息のコントロールを維持できるなら、赤ちゃんとママにとってより良いことです。)

妊婦さんはとにかく喘息発作を起こさないことが重要です。
ステロイドの副作用よりも酸素不足の方がよほど危険です。
赤ちゃんを無事に出産するためにも、ステロイドを使うことを恐れずに喘息をコントロールすることを心がけてください。

妊娠中の喘息はとっても危険!~ステロイドを使うこと恐れないで~