Fever outpatient発熱外来

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咳 

気管支喘息について

そもそも咳は何故出ているのか

咳は生体の防御反応です。
呼吸をする気管支に異物を認識した時に出て来るのが咳です。

咳

例えば食事をしてて間違ってご飯粒が気管に入った時とか、刺激の強い気体を吸い込んだ時とかですね。
異物が入ってくると肺炎になったりしますから非常に大切な体の反応なんですね。

咳

また、痰が多く出てきて末梢の気管支に溜まってしまった時とかにも咳が出ます。
痰が詰まると息が苦しくなって酸素が足りなく感じてきますからこれもまた大切な反応です。

咳

気管には咳受容体と呼ばれるセンサーがあり、そこに刺激が入ると電気が神経を流れて延髄にある咳中枢に伝わり咳が発動されます。
また、気管支の周囲にある平滑筋が狭くなっても咳が出る可能性が考えられています。これは喘息発作の時に気管支で起きています。
喘息になると咳が出てくる理由の一つかもしれません。

ツロブテロールテープという貼り薬を喘息の時に使いますが、この中には気管支を広げる薬が入っています。
気管支を広げることによっても咳が止まると思われます。
ただ、普通の気管支炎に対しては効果がないことが明らかになっていますのでこのテープで効果がないときはただの気管支炎かもしれません。

それでは果たして咳は止めたほうが良いのか?

この重要な生体防御反応である咳を止めてしまっても良いのでしょうか。
痰が多い咳は止めない方が良いと思います。
肺炎の合併した喘息患者さんの咳を止めすぎて痰が気管支に詰まって肺が潰れてしまうこと(無気肺と言います)を昔経験しました。
先日、僕も風邪をひいいて痰が多い風邪をひきました。
朝起きてみたら咳が出て大きな痰が出るかと思ったら気管のところに引っかかって息ができなくなりました。
一瞬窒息して死ぬんじゃないかと思ってしまいました。
もう一発大きな咳をして大量の痰を外に出して窒息は免れました。
もともと鎮咳薬が必要なほどの咳は出ていなかったのでそのまま使わずにいます。

しかし、咳反射が異常に強くなることがあります。
咳反射の亢進といいます。
ほんのわずかの刺激で咳が連続して出たり、夜に寝ようとしても咳がひっきりなしに続いて簡単に眠れないとき、夜中に目がさめるほど咳き込み家族はスヤスヤ寝ているのに自分一人だけ咳に苦しんでしまうような咳などは病的な意味を持つ咳として止めるべきものと考えます。
僕も昔咳で目が覚めて喉がムズムズしてどうにも咳が止められないときがありました。
水を飲んでも何をしても止まらず強い鎮咳薬を使ってなんとか眠りました。
以上のような咳反射の亢進している状態は咳止めの出番と考えています。

咳の原因って何だろう?

今まで急性期の気管支炎を中心に書いてみましたが、咳の原因は多岐に渡ります。
胸部レントゲンで異常のあるものを考えてみると、肺がん、肺結核、マイコプラズマ肺炎、細菌性肺炎、慢性気管支炎、自然気胸、心不全、肺真菌症、肺吸虫症、 etc.あまりにも多岐に渡り細かくなりすぎるのでこの辺でやめておきます。
咳の分類はいろいろありますが、今までお話ししてきた急性の咳と3週間以上続いている慢性の咳があります。
胸部レントゲンで異常のない慢性の咳の原因疾患は大きく4つです。
咳喘息、アトピー咳、慢性鼻副鼻腔炎、逆流性食道炎です。
日本ではさまざまな報告がされていますが、最も多いのは咳喘息です。
咳喘息は36%~55%くらいの頻度で見られ、吸入の気管支拡張薬の効果があります。
この薬は慢性の咳に試してみたい薬の代表選手ですね。
アトピー咳というのはアレルギー要素の強い咳です。
アトピー咳に効く薬はスプラタストトシル酸塩です。
滅多に使わないアレルギーの薬にまた出番が来たのは喜ばしいことです。
慢性副鼻腔炎は抗生物質の少量長期投与が効果があると言われていますが、あまりにも長く処方されていたため今では耐性菌が出現して大変なことになっています。
また逆流性食道炎の咳を止めるためにPPIと呼ばれる胃薬を使うのですが、結局それだけで咳を止める効果があるか判定するには8週間もかかります。

咳の治療薬
咳止めを使う前に咳の原因を見極めて原因となる病気の治療が一番重要です。
原因を治せば咳止めは不要になります。
ただし、どうにもしつこい咳があることは確かです。
そんな時に使う薬を考えてみました。
麦門冬湯:喉元を潤す作用があり、痰が多い場合はむしろ痰の量を増やしてしまうことがあります。
アスベリン:小児適応もあります。
比較的安全性が高いと思いますので妊婦の方とか、授乳中のママとかに使うことが多いです。
フラベリック:咳止めとしては効くほうだと思いますが、音程が半音下がる聴覚障害が起きることがあります。
携帯の電子音がおかしくなったりする方がいます。音楽を仕事としている方には出さないように気をつけています。(2020年10月発売中止になりました)
リン酸コデイン:おそらく一番強い鎮咳薬ですが、それ故に副作用もさまざまです。便秘、ねむけなどでてきます。
便が硬くなるので便を柔らかくする薬を併用したりします。夜中に眠れないほどの咳が出るときに処方することが多く、またリクエストの多い薬でもあります。
デキストロメトルファン:古くからある薬です。
1回1錠では効かないこともあるので状況によっては2錠ずつ飲んでいただくこともあります。

このように、いずれにしても咳の治療はまず原因を治療をするのが最優先です。


2021814日加筆修正)