Fever outpatient発熱外来

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痰 

肺年齢について

そもそも痰とは一体何のためにあるのでしょうか?

気道には杯細胞という細胞があり、気道がカラカラに干からびないように常に粘液を分泌しています。
この粘液は気道に入ってきたホコリなどを取り込みます。
そして、繊毛細胞という細胞にある動く毛によって、粘液が少しずつ出口へ向かってかき出されます。

痰

風邪をひいて気道に感染が起きると、細菌やウイルスが気道に入り込んできます。
そして気道の細胞を壊してしまいます。

細菌やウイルスが入り込んでくると細胞からは粘液が多く分泌され、白血球の出番となり細菌やウイルスを攻撃します。

もし最初の攻撃でそのまま白血球が勝ってしまったら、風邪を引きかけたのにすぐに治ってしまったような感覚になるでしょう。

白血球がなかなか相手を倒せなくて戦いが長引くとお互いの死骸が粘液の中に溜まっていきます。

溜まった粘液が多くなると咳が出て、外へ一気に飛ばします。
これが「痰」です。

痰には2種類ある。
①肺から上がってくる場合
②鼻水が下りてくる場合
の2つです。

痰

①肺から上がってくる場合
一つは肺が原因で痰が出てくる場合です。
肺の奥底から上がってくる痰なのでこれは対処しなければなりません。
肺炎の可能性がある時は抗生物質の点滴や内服が必要になります。

また、気管支炎になったとき痰が出てくることがあります。
その場合は痰をなるべく外に出すようにしないといけないため、咳を止めてはいけません。

痰

②鼻水が下りてくる場合
もう一つは鼻水が喉の奥に落ちて後鼻漏という痰になり、喉に落ちていくものです。
鼻水が由来なので多くの場合は抗生物質が不要です。
この場合は鼻水を投薬などで少し減らすと、痰が減りやすくなります。

この2種類の痰はそれぞれ治療方針が全く異なるため明確に分ける必要があります。

また、咳止め、鼻水止め、痰を切る薬の組み合わせはよく考えなければなりません。

痰の出る病気
<気管支炎> 
痰の病気で一番多いのは気管支炎です。
これは本当に多いですね。

気管支炎においてウイルスが原因である場合、抗生物質(細菌をやっつける物質)は不要です。
ただし、3日以上発熱するなどして痰がどんどん黄色くなっているような時は気管支炎がこじれて細菌が入り込んできている可能性があるので、抗生物質を使うことがあります。

<副鼻腔炎>
二番目に多いのは副鼻腔炎です。
気管支炎と副鼻腔炎の痰は、細菌性であったとしてもドレナージ(痰を外に出す)だけで治ってしまうことが多いです。

<肺炎>
三番目に遭遇するのは肺炎です。
これはレントゲンを撮らないとわかりません。
しかし、胸部レントゲンでもわからないような肺炎もあります。

注意深くレントゲンを観察してもどうしてもわからない時は、呼吸回数、発熱、採血、喀痰培養検査、抗体の迅速検査などを総合的に判断しないとなりません。

ここで重要な指標となるのは発熱です。
熱の出ない肺炎もあるのですが、一般的には非常に稀です。
また、咳のない肺炎もありますがこれも非常に稀です。
よって発熱と咳は肺炎を判断する上で特に重要となっています。

<その他> 
心不全が悪化しても、痰が出てくることがあります。
水分が多くなりすぎて痰の量が増えるからです。

このようにさまざまな病気において痰はみられます。

痰の色について

痰

緑色の痰が出る時には59%の確率で、黄色い痰だと46%の確率で細菌がいます。
その原因となる細菌はインフルエンザ菌、ヘモフィルスパラインフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、肺炎桿菌、緑膿菌、モラクセラ・カタラーリスなど、様々です。
それぞれの細菌で効果がある抗生物質が異なります。

<緑色の痰>
なぜ痰が緑色になるかというと2つの原因があります。
一つ目はミエロペルオキシダーゼが緑色だからです。
ミエロペルオキシダーゼは白血球の好中球の中に存在し、好中球が細菌などと戦うときに放出されます。
よって緑色の痰が出るときは細菌感染を起こしている可能性が考えられます。

二つ目の原因は緑膿菌です。
緑膿菌は緑色の色素を産生します。
そのため痰の中に緑膿菌がいると痰の色が緑色になる可能性があります。

緑膿菌自体は毒性がもともと弱く体の中にもともと存在する常在菌の一つでもあります。
しかし、体の免疫力が低下してくると肺炎などをひき起こします。

もともとは毒性の弱い緑膿菌ですが、抗がん剤の治療などで免疫力が低下している状態だと肺炎を起こすことがあります。
治療は抗生物質の点滴を使います。

免疫力が低下していないのに喀痰に緑膿菌が認められた場合は、ただ存在しているだけのこともあるので、治療するかどうかは体の状態やレントゲン検査などをして総合的に判断します。

<黄色の痰>
痰の色は緑と並んで黄色がとても多いことがわかっています。
痰がなぜ黄色くなるのかははっきりしていませんが、抗生物質の治療をすると痰の色はどんどん薄くなり、最終的には白か透明になってきます。

もちろん抗生物質の治療をしなくても改善する場合はあります。
炎症が改善すると痰の色も改善してくるので、痰の色は治療の指標に役立ちます。

<オレンジ色の痰>
オレンジ色の痰が出るときはレジオネラ肺炎にかかっていることがあります。
レジオネラ肺炎の原因菌であるレジオネラ菌がフェニルアラニンとチロシンを分解して茶に近いオレンジ色の色素を作ります。

診断が遅れると非常に危険な状態になるので忘れてはならない菌です。
24時間風呂などで繁殖しやすい菌でしばしば重症肺炎の原因になります。

痰

レジオネラ菌は1976年アメリカの在郷軍人会の大会が開かれた際に221名が原因不明の肺炎にかかり、一般の抗生物質の治療をしたにもかかわらず、34名が亡くなったという事件の際に発見されました。
それゆえかつては在郷軍人病という名前がついていたこともあります。

治療はニューキノロン、アジスロマイシン、ドキシサイクリンなどで行います。
治療薬をきちんと選択できれば治療可能な疾患です。 

<黒色の痰>

黒い痰は、汚染物質、煙、喫煙などを吸い込んだ時に黒い物質が気道に付くことによって起こり得ます。
もし黒いものを吸い込んだ記憶がないのに黒い痰が出ていたら、それは真菌(カビ)が肺炎を起こしているかもしれません。

肺炎だとわかっているのに一般の抗生物質が効かない時は、真菌による肺炎の可能性があります。
抗真菌薬で治療します。 

血痰
血痰は文字通り血の混じった痰のことです。
出血する原因によって心配する必要があるかが決まります。

①一時的な血痰の場合
一時的に風邪をひいて、咳をして咽頭が切れたり、鼻水をかんだ時に鼻血がでて、それが痰に混じるだけなら心配いりません。
多くの場合、数回ほど痰に血が混じってそのあと出なくなります。

②血痰が続いている場合
喉以外の病気でないかを確かめるために胸部レントゲンを撮影しなければなりません。
ただし、血痰が数回以上続くことは非常に稀です。

他には喉頭がんでも血痰が出てくることがあります。
肺に異常がない時で血痰が続くようなら耳鼻科で咽頭をカメラで確認する必要があります。

まとめ

痰

痰は非常に重要な病気の兆候です。
痰に色がついていた時や、胸が痛い、咳が出る、熱が出るなどほかの症状もあるときは医療機関を受診したほうがよいでしょう。